日本の戦後の経済成長率について、その年ごとの推移と時代背景を解説します。
日本の戦後経済は、奇跡とも呼ばれる高度経済成長を経て、世界有数の経済大国へと発展しました。しかし、その後は安定成長、バブル経済とその崩壊、そして長期にわたる低成長の時代を経験するなど、大きな変動を繰り返してきました。
以下に、主な時代区分ごとの経済状況の解説と、内閣府の国民経済計算(GDP統計)を基にした実質経済成長率の年次推移を示します。
日本の戦後経済の主な歩み
- 高度経済成長期(1950年代半ば~1973年) 朝鮮戦争特需をきっかけに本格的な復興を遂げた日本経済は、「神武景気」「岩戸景気」といった好景気を経て、年平均10%前後という驚異的な成長を続けました。旺盛な設備投資と個人消費に支えられ、重化学工業を中心に産業構造が大きく転換し、国民の所得も飛躍的に増大しました。1964年の東京オリンピック、1970年の大阪万博は、この時代の象徴的な出来事です。
- 安定成長期(1974年~1980年代半ば) 1973年の第一次石油危機(オイルショック)により、日本の経済成長は急ブレーキがかかり、1974年には戦後初のマイナス成長を記録しました。これを機に、省エネルギー技術の開発や産業の合理化が進み、経済は年率4%前後の安定した成長の時代へと移行しました。
- バブル経済期とその崩壊(1980年代後半~1990年代) 1985年のプラザ合意以降の急激な円高と、それに伴う金融緩和を背景に、株価と地価が異常な高騰を見せる「バブル経済」が発生しました。1980年代後半には5%を超える高い成長率を記録しましたが、1990年代に入るとバブルが崩壊。金融機関は多額の不良債権を抱え、日本経済は「失われた10年」と呼ばれる長い停滞期に突入しました。
- 失われた20年と構造改革(2000年代~2010年代) 2000年代に入っても経済の低迷は続き、ITバブルの崩壊や2008年のリーマン・ショックといった世界的な経済危機が追い打ちをかけました。特にリーマン・ショック翌年の2009年には-5.7%という大幅なマイナス成長を記録しました。2010年代には、東日本大震災からの復興需要や、大規模な金融緩和と財政出動を柱とする「アベノミクス」により一時的に景気は上向きましたが、持続的な高成長には至りませんでした。
- 近年の動向(2020年~) 2020年からの新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、経済活動を世界的に停滞させ、日本経済も戦後最悪とされる-4.1%のマイナス成長を記録しました。その後は経済活動の再開とともにプラス成長に復帰していますが、物価上昇や世界経済の不確実性など、新たな課題に直面しています。
【年次別】日本の実質経済成長率(%)
以下は、内閣府発表のデータを基にした、日本の実質国内総生産(GDP)の対前年比成長率です。
西暦 | 年号 | 実質GDP成長率 (%) | 主な出来事 |
高度経済成長期 | |||
1956 | 昭和31 | 7.3 | 神武景気 |
1957 | 昭和32 | 7.9 | |
1958 | 昭和33 | 5.2 | なべ底不況 |
1959 | 昭和34 | 10.8 | 岩戸景気 |
1960 | 昭和35 | 13.4 | |
1961 | 昭和36 | 12.0 | |
1962 | 昭和37 | 7.0 | |
1963 | 昭和38 | 9.0 | |
1964 | 昭和39 | 11.1 | 東京オリンピック |
1965 | 昭和40 | 5.7 | 40年不況 |
1966 | 昭和41 | 11.2 | いざなぎ景気 |
1967 | 昭和42 | 11.3 | |
1968 | 昭和43 | 12.4 | |
1969 | 昭和44 | 12.0 | |
1970 | 昭和45 | 9.9 | 大阪万博 |
1971 | 昭和46 | 5.2 | ニクソン・ショック |
1972 | 昭和47 | 8.8 | |
1973 | 昭和48 | 7.7 | 第一次石油危機 |
安定成長期 | |||
1974 | 昭和49 | -1.2 | 戦後初のマイナス成長 |
1975 | 昭和50 | 2.5 | |
1976 | 昭和51 | 4.4 | |
1977 | 昭和52 | 4.3 | |
1978 | 昭和53 | 4.8 | |
1979 | 昭和54 | 5.3 | 第二次石油危機 |
1980 | 昭和55 | 2.6 | |
1981 | 昭和56 | 3.6 | |
1982 | 昭和57 | 2.8 | |
1983 | 昭和58 | 2.6 | |
1984 | 昭和59 | 4.3 | |
1985 | 昭和60 | 5.2 | プラザ合意 |
バブル経済期と崩壊 | |||
1986 | 昭和61 | 3.2 | バブル景気開始 |
1987 | 昭和62 | 4.1 | |
1988 | 昭和63 | 6.8 | |
1989 | 平成元 | 4.9 | |
1990 | 平成2 | 5.2 | |
1991 | 平成3 | 3.4 | バブル崩壊 |
1992 | 平成4 | 0.8 | |
1993 | 平成5 | -0.5 | |
1994 | 平成6 | 0.9 | |
1995 | 平成7 | 2.6 | |
1996 | 平成8 | 3.4 | |
1997 | 平成9 | 1.0 | アジア通貨危機 |
1998 | 平成10 | -1.3 | |
1999 | 平成11 | 0.1 | |
失われた20年と構造改革 | |||
2000 | 平成12 | 2.8 | ITバブル崩壊 |
2001 | 平成13 | 0.4 | |
2002 | 平成14 | 0.1 | |
2003 | 平成15 | 1.5 | |
2004 | 平成16 | 2.2 | |
2005 | 平成17 | 1.8 | |
2006 | 平成18 | 1.4 | |
2007 | 平成19 | 2.1 | |
2008 | 平成20 | -1.0 | リーマン・ショック |
2009 | 平成21 | -5.7 | |
2010 | 平成22 | 4.1 | |
2011 | 平成23 | -0.1 | 東日本大震災 |
2012 | 平成24 | 1.7 | |
2013 | 平成25 | 2.0 | アベノミクス開始 |
2014 | 平成26 | 0.7 | 消費税率引き上げ(8%) |
2015 | 平成27 | 1.6 | |
2016 | 平成28 | 0.8 | |
2017 | 平成29 | 1.6 | |
2018 | 平成30 | 0.6 | |
2019 | 令和元 | -0.4 | 消費税率引き上げ(10%) |
近年の動向 | |||
2020 | 令和2 | -4.1 | 新型コロナウイルス感染症拡大 |
2021 | 令和3 | 2.6 | |
2022 | 令和4 | 1.0 | |
2023 | 令和5 | 1.9 |
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