「消えた留学生」問題は必然、安倍政権が生む「外国人 労働者大量逃亡時代」消えた留学生問題が大騒ぎになって いる。しかし、日本政府が外国人労働者を受け入れ — 読 み進める headlines.yahoo.co.jp/article

「消えた留学生」問題は必然、安倍政権が生む「外国人労働者大量逃亡時代」
3/21(木) 6:01
ダイヤモンド・オンライン

「消えた留学生」問題は必然、安倍政権が生む「外国人労働者大量逃亡時代」
低賃金で日本人に敬遠される職種でも、外国人労働者なら喜んで働いてくれるはず――そんなムシのいい話がまかり通るはずはない Photo:PIXTA
 消えた留学生問題が大騒ぎになっている。しかし、日本政府が外国人労働者を受け入れ始めれば、さらに多くの外国人が「消える」ことになるのは間違いない。そもそも、日本人もいやがる低賃金労働を「外国人ならやってくれるはず」という思い込みは間違っている。なぜなら、彼らが日本に来る動機は間違いなく「お金」だからだ。(ノンフィクションライター 窪田順生)

● 消えた留学生問題から 予想できる将来の日本の惨状

 後からボロボロとこういう話が出てくるということは、これもまだ「氷山の一角」に過ぎないのではないか。

 ベトナム、ネパール、中国国籍などの留学生約700人が「所在不明」になっている東京福祉大学で、文科省などが調査を進めたところ、所在不明者は700人どころの騒ぎではなく、過去3年間で1400人にも上ることがわかったというのだ。

 報道によると、この「消えた留学生」たちの多くは、授業に出たのはわずか数回で、ある日忽然と姿を消し、学費未納で「除籍」扱いになった者である。

 じゃあ、そこでこういう人たちは故郷に帰るのかというと、そうではなく、多くはビザが切れても不法残留し、外食や建設現場など、日本人労働者に敬遠される「人手不足業界」で、労働力として重宝されているのだという。

 という話を聞くと、「ほらみろ、こういうことになるから、留学生とかじゃなくて外国人労働者としてしっかりとした受け入れ体制をつくらないといけないのだ!」なんて感じで胸を張る人たちがいるが、筆者の考えはまったく逆である。

 こういう問題が起きるから、外国人労働者の受け入れ拡大はやめた方がいいのだ。

 今の流れのままでいけば、数百人、数千人規模の外国人労働者が「所在不明」となる。今回の「消えた留学生」問題というのは、近い将来に日本を震撼させる「消えた外国人労働者」のプロローグに過ぎないのである。

 今回の一件から我々が学ばなくてはいけないことは、「外国人留学生にはもっと厳しい監視が必要だ」とか、「留学生を受け入れると補助金が出ることも問題だ」というような規制や制度うんぬんの話ではなく、ごくシンプルな「人間心理」である。それを一言で言ってしまうとこうなる。

 「人間は時にルールを破ってでも、待遇の良い方向へ流れていく」

 留学生が学校を除籍になれば当然、不法残留になる。にもかかわらず、留学生たちは学校から消えた。学費を支払いながら留学生を続けるよりも、バイトでガッツリ稼いだ方がよほど稼げるからだ。待遇の良さが、リスクを上回ったのだ。
● 外国人労働者は制度を 守って働いてくれるのか?

 このような「人の心」という視点が昨年、選挙のために政府がゴリ押しした「外国人労働者の受け入れ拡大」ではゴッソリ抜けている。

 安倍政権によると、「外国人労働者」は「移民」ではなく、「特定技能」という在留資格で、14業種の特定産業分野で働くことを条件として在留が許可される人だ。つまり、介護職で日本に来た人は介護職を辞めたら日本から出てってね、というわけだ。

 だが、この制度を適応する相手は「奴隷」ではなく、職業選択の自由を持つ人間である。当然、「消えた留学生」らと同じような心理が働く。

 例えば、介護職の「特定技能」で日本にやってきた中国人の女性がいたとしよう。しかし、ご存じのように、日本の介護現場はハードな割に賃金も低い。今や中国の介護現場の方が待遇がいいという話もあるくらいだ。

 ということで、程なくしてこの女性、勤務先どころか、日本で介護の仕事をすること自体を辞めたいと思い立った。

 介護を辞めれば、「在留資格」を奪われて日本から出ていかなければならないのだが、彼女はサクッと職場から消えた。同郷の友人から紹介された夜の仕事でガッツリ稼げるからだ。待遇の良さが、不法残留というリスクを上回ってしまったのだ。

 こうして一人、また一人と外国人労働者が何の断りもなく職場から姿を消して行き、気がつけば、「人手不足の救世主」と崇めていた外国人労働者が、何千人も「所在不明」となり結果、日本は、何をしているのかよくわからない「不法移民」が溢れかえる国になりましたとさ――。

 「はいはい、妄想おつかれさん」という声が聞こえてきそうだが、筆者がこういう最悪な未来を予想してしまうのは、他にも理由がある。実は今回の「消えた留学生」問題というのは図らずも、政府が推進する「特定技能外国人労働者」という制度の致命的な欠陥を露呈させてしまっているからだ。
● 外国人留学生の第一目標は 当然「お金」である

 この制度は、「特定技能」を持つ外国人労働者の皆さんは、人手不足に悩む業界で文句ひとつ言わずにキビキビ働いてくれる、ということが大前提となっている。

 これらの業界は、仕事がきつくて、賃金も安いということで、日本人労働者から敬遠されているが、外国人労働者の方たちは「日本で働けるだけで幸せです!」と考えるであろうという前提がある。だが、「消えた留学生」問題を見る限り、それは何の根拠もない「妄想」だと言わざるを得ない。

 そもそも、消えた1400人の外国人留学生に限らず、東京福祉大学に来ているほとんどの外国人留学生は、この学校を経て日本で仕事に就きたい、キャリアアップをしたいということを目的としている。要は「お金」が目的である。

 もちろん、「少子高齢化で悩む日本の方たちを助けるため、介護施設で働きたいんだ!カネなんて二の次だ!」という、ありがたい外国人の方たちもいらっしゃるかもしれないが、入学希望者の多くは「お金」を第一目標としている。その動かぬ証拠が、東京福祉大学留学生向けパンフレットにデカデカと記されたこの文言だ。

 《「お金持ち」になる夢につながる》

 わざわざカギカッコと赤字で「お金持ち」を強調しているのだ。こういう呼びかけをして、それに応じてやってきた留学生の多くが「お金」を目的として、日本にやってくるのは当然である。

 そう聞くと、金目的で日本に来る留学生を批判しているように聞こえるかもしれないが、そんなつもりは毛頭ない。むしろ、安くない学費を捻出して海外で勉強をしようという者ならば、当然のモチベーションだ。

 そして、このモチベーションは「外国人労働者」になれば、さらに高くなることは言うまでもない。

 しかし、先ほども申し上げたように、「外国人労働者」が働けるのは、「人手不足業界」に限定されている。なぜこれらの業界が人手不足になっているのかというと、仕事がハードということもあるが、何よりも賃金が低いからだ。

 もう何を言わんとしているかお分かりだろう。政府の進める「外国人労働者の受け入れ拡大」というのは、「お金」が目的で日本にやってくる外国人たちに、彼らの来日目的にマッチしないどころか、自国民が嫌がるような「低賃金労働」をあてがう、というかなり無理のある話だ。
● 年間85万円の学費を4年払って 月給23万円の将来はアリか?

 どれくらい無理かというと、経営者やエリートビジネスマンと結婚したいと願う女性に、アルバイトで夢を追いかける若者とお見合いさせるくらい無理だ。どんなにゴリゴリ押しても「破談」間違いなし、というのが日本の「外国人労働者の受け入れ拡大」なのだ。

 そして、このような日本側が外国人に求めることと、外国人が日本に求めることの悲劇的なすれ違いの結果が、「消えた留学生」問題である可能性が極めて高い。

 多くの所在不明者を出した、東京福祉大学の「研究生」の1年間の学費は62万8000円。この準備過程を終えて学部に編入すると年間85万かかる。かなりの額だ。では、このような学費を毎年払い続けて、晴れて日本で働くことができた時、果たして「パンフレット」に書かれていたような「お金持ち」になれるのかというと、かなり難しい。

 例えば、東京福祉大学卒業生の多くが進むであろう「介護職員」(施設)の1ヵ月の賃金は約23万3600円(平成29年賃金構造基本統計調査)である。国内での業種の中でも決して高いとは言えない賃金だ。

 いや、これなどまだマシな方だ。昨年7月に放映された「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)が取り上げた、介護施設で働くフィリピン人看護師の月給は14万だった。果たして、このような賃金を手にして、彼らは「お金持ち」だと感じるだろうか。感じるわけがない。

 国によっては祖国へ仕送りすれば、一家全員が暮らせるくらいの額にはなるが、働いている外国人自身も日本で生活しなくてはいけないのだ。中には、「聞いていた話と違う」「騙された」と思う人もいるだろう。

 いずれにせよ、「お金」が目的で日本にやってきた留学生たちとって、日本で福祉や介護の職に就くということは、あまりにも費用対効果の悪い話だったことは間違いない。
● 外国人を「部品」のように扱う 心なき日本政府の行く末は

 「仕事ってのはそんな甘いもんじゃない!そういう苦労をすれば、いつかちゃんと報われるんだ」と怒り出すおじさんも多いかもしれない。

 ただ、日本人相手ならそういう説教も通用したかもしれないが、彼らは「外国人」である。日本人のように責任を求めるなら、日本人と同じような権利を与えるのが筋だ。それができないのに義務やリスク、そして重労働を押し付けるのなら、「お金」などの見返りを保障するしかないのだ。

 しかし、現行の「外国人労働者の受け入れ拡大」にはそういう視点はゼロだ。

 外国人は、日本人が嫌がる低賃金・重労働の仕事を黙々とこなせばよし。外国人には職業選択の自由はないので、決められた仕事以外はしてはならぬ――。そんな都合のいい「奴隷」制度のような話がうまくいくわけはないのである。

 「消えた留学生」問題は、この国が「外国人」という人たちの「心」をまったく考慮せず、「部品」のひとつのようにしか捉えていないという事実を、これ以上ないほどわかりやすく露呈させた。

 これまで本連載で繰り返し指摘してきたように、人手不足業界の待遇改善、つまりは賃金を上げていくことをせずに、外国人労働者を受け入れても、日本人の低賃金労働の現場で既に起きているブラック企業、パワハラ、バイトテロなど「恥」を世界へ向けて発信することにしかならない。

 今回の問題を受けて、TBSの取材に対して東京福祉大学は「留学生を増やすという国策に沿ってやっている」と答えていた。

 これから外国人労働者をめぐるトラブルが日本中で増える。劣悪な労働環境やパワハラ、長時間労働を強いたとして告発されるブラック企業、悪徳ブローカーなども、自分たちの正当性を主張するため、「だって、これは国策ですから」というような釈明をするのは、容易に想像できる。

 実はこの構図は、70年を経てもいまだに日本を悩ます「従軍慰安婦」や、「徴用工」の問題とまったく同じである。

 慰安所に女性を売り飛ばした韓国の女衒や、外国人の炭鉱夫をこき使った企業は口が避けても、「外国人は低賃金でこき使えるから」とは言わなかった。では、どういう大義名分を掲げたかというと、「日本のため」である。

 このように、日本人労働者から敬遠されるブラック業界の救済のため、「国策」を持ち出してしまったことが、すべての悲劇の始まりなのだ。

 日本に来たい、働きたい、と言っていた外国人が、ある日を境に「被害者」へと変わるのがこの手の問題の恐ろしいところだ。やはり「外国人労働者」問題の行き着くところは、「従軍慰安婦」や「徴用工」のような国際的人権問題なのかもしれない。
窪田順生

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